動いている車は苦手だけど止まってしまえばこっちのもの、、
そう言わんばかり
犬の表情が車止めに到着した途端にぱっと明るくなる
この日は一番手前のゲートが閉じられていた
そのゲートの直前まで車を進めて右のスロープに少し乗り入れる
そうしてから後退して車の向きを180度変えて停める
後ろのハッチを開けると 犬ははやく外に出せと後部座席の背もたれに身を預けるように乗り出し
さらには鼻を鳴らしながら 準備に取り掛かろうとするタシに 開放の催促とも取れる視線を送り続ける
二つ目のゲートまで入れないと 20分ほど林道を余計に歩くことになるのだが
だからといってソレがなんだというコトもない
もともとの車止めがココなのだ
そう 現に何年もそうしてきたのである
それがここ最近になって其処のゲートが開いた
そしてさらに一キロか二キロミーターほど入った奥に新たなゲートが出現したのだ
手前のゲートが開いていれば ソレは楽だし歓迎もする
でも 其れが例え閉まっていたとしてもだ 犬もワタシも 特に何も気にもしない
新しいゲートの手前で水を汲んだ
沢の水を使ったところでなんの差し支えもナイのは判っているけど
せっかく安全な水が湧いているんだからと だいたいいつも此処で水を汲んで峪へと降りる
二リットルも三リットルも必要だ というなら それはまた別な話だけどね
おととい降った雨はなんの足しにもなっていなかったようだ
峪沢の水は増えるどころか減り続けているようで
見るからに真夏の疲れた峪沢の様相だった
そんなだったので 手前の流れを渡ったところで ”釣れる気がしないね” と犬に告げた
お盆が明けて間もなかった
だから のんびり出来ればそれでよかった、、、と言いたいとこだったが
あれだけの雨の後である
心中は
太い流れの中から大きなやまめか太いいわなが踊り出てくるだろうと
そう信じて疑う心などこれっぽっちも持ち合わせてはいなかったのだよ
しかし 流れは貧弱とまでは言わないが
いつかの素敵な流れとは比べようもなく 犬とワタシはそなんか細い流れを跨いで そしてとにかく一息いれた
犬は朝飯を済ませて来ていたので 特に彼女の食べるものは用意してこなかった
ワタシは何時か買ったカップ麺が車に転げていたので 車止めを出発する前にソレをルックサックに放り込んできた
一人でソレを喰っても良かったが 結局そうはせずに犬にも少しだけ分けてやった
一人で喰うより一緒のが旨いしね
犬は ”しょっぱいね” とは言わなかったけど
本当に 相当にしょっぱかったんだろうね 何度も何度も長い舌をだしてペロッ ペロッっとやっていたから
犬に告げた通り何時まで経っても釣れなかった
だからという理由ではないが 試しに毛鉤を変えてみる
すると 犬が不思議そうにそれを見上げていた ”オマエなにしてる” って顔で
それが単に普段と違う動きだからなのか
それとも ”そんな事しても無駄だろ” とでも言いたかったのか
はたまたそうでは無く ”そうそうソレのが釣れると思うよ” といったアドバイスを送っていたのか
とにかく毛鉤を交換しているワタシをじっと見ていたのだ
交換が功を奏したのかは全くもって疑問だが
とにかくその後に一つ掛けた
せっかくなので 遠くの浅瀬で遊んでいた犬を呼び寄せた
”釣れたよ” と大きな声で
犬は何時も通りに駆けて此方にやってくる
しかし せっかく釣り上げたさかなの真下に来たアイツの目ときたら、、、、、
その後も つまらなそうに浅瀬をウロついている犬
時々呼びもしないのにやって来ては 一段も二段も高い岩の上から此方を見下ろして 何か言いたそうな目を向けている
奴が口を利けたら ”ねえ なんで釣れねえの?” 絶対そう言ったに違いない
そして そんな時ワタシは ”下手糞だからですよ” って そう応えるしかないんだろうな、、、、
いつもの峪だから
何時ものように次のコンクリーの壁まで行ったところで仕舞いにした
でもこの日は 少し時間も早かったので ちょっと戻ってシモ手の方に降りてみた
すると 二振りか三振りかするかしないかといった間に 上から釣り人が下ってくるのが見えた
河原でちょっと言葉を交わし 林道に上がって車止めまで返しながらまた話をした
考えている事はみな同じらしく 雨後は良くココへ来てると言っていた
おまけにまったく知らない人でもなかった
というか いつも行く小屋でお会いしているそうだ
そうなんだ ワタシは名前や顔を覚えるのがホントに苦手なのだよ
ほんとに失礼いたしました、、、。
釣行日 2015/09/19