December 19, 2014

お坊やまで

zoe

おぼうやまで一晩


おぼうやまの天辺は そこが道中半ばなのか天辺なのか やや曖昧な感じである
そんなだから  zoe はその頂上らしきスポットを勢いよく通りすぎてどんどん先へ行ってしまった

これ以上先へは行かないからと 50ミーターほど頂上を通りこし向こう側へと下りかけた zoe を呼び戻す
呼びかけに素直に応じた彼女は ボクが待つ狭い頂上へとやってきてちょこんと座りこちらを見上げる
その顔は ”帰ろうか” そんな声が掛かるものと思っていたような そんな目だった

zoezoezoe

高速道路とこちら側の小道の間には柵があるだけだから
柵のこっち側を歩いていると時速120kmくらいで走る車の臨場感がビシビシ伝わってくる

その道は高速バスの停留場へと続く道なんだけど 
尾根に取り付くためにはそこを辿る そしてどん突きにある停留場へは入らずにさらに右へ行く
するとススキとか夏草なんかが枯れて ちょっと猥雑な感じの藪の中にうっすらとした踏み跡が発見できる

ちょっとした藪を漕ぐ
その先に現れる土の急斜面
踏み跡は幽かで おまけにここのところの日照り続きのせいで舞い上がる埃の勢いがものすごい

他にも道はあったんだろう
でも一旦登り始めたら引き返すのは面倒だ
だからいつもそうしてるように 
この日も引き返したりはせずにそのまま埃にまみれるまま尾根へと這い上がった



南東尾根は大好きな尾根だ
広くて明るくて そしてなんといっても陽当たりがよくて冬でも暖かくて最高だ

この界隈では 滝子山の南稜と呼ばれているジャクショウ尾根も同じように心地いい場所だけど
あそこは近年辿る人が増えて なんだかすこし落着かない雰囲気になってきた
もっとも目的が違えばそんな事はないのだけれど
この日はふかふかの落ち葉の上に幕を張って 
若い犬と一晩過ごすという そんな目的があったもので、、、、

zoe
実は 一旦は違う尾根を目指そうと
ここよりも二つ手前のインターチェンジで降りたのだけれど
商店で食料を買い足しながらふと考えたたのだ

”まてよ あの北向きの尾根の向こっ側にはでかい山があったあったな、、、
     今時分だと西陽はそう長くは当たらないかも” と

一応商店を出た時点で地形図を見直そうかとも思ったけど
いつも通っているとこだから 確かめる必要も無いのはわかっていた

そこらの峪へいつも釣に通っているから
帰るとき そのでかい山へと陽が入っていくのをその度に眺めているんだから

もとより日が短い季節なのだ
地図なんてみてたらまた他の尾根が気になるに決まってる
そしたら決まるものも決まらなくなる

そんな無駄な時間を取って陽暮れの忙しなさの中であたふたするのも馬鹿らしい
だから さっさとそこで買ったパンを犬と分けあって
一息いれて 直ぐにさっき降りた高速の入り口へと向うことにした 





zoefueltrail

尾根に乗って落ち葉の上を歩きながら
”やっぱりこっちへ来てよかったな” と 水飲み休憩のたびに犬に同意を求めたけど 犬は長い舌をだして首をかしげるだけ

おまけに水を飲み終わると 若い犬は強い足を活かしてグングン登って行ってしまう
付き人はまったく付いていけない

時々癇癪まじりの大声をあげて犬を呼ぶが その犬は振り向くだけ
それでもこっちの姿が見えなくなると心細いのだろう 
遠くでボクの接近を待っているらしい姿が時々見える それはホントに小さな粒状の黒い影のようで
その小粒な影は おそらくそれを犬と判っていなければ 勿論それがいぬだなんて判別出来っこないくらいの
そんな薄情なくらいに置き去りにしておいてといったくらいの距離感でだ

ならばと ”オマエの事など何も気にならないさ” といった仕草が伝わるかは知れないけれど
とにかく向こうを見ないようにしながら
今夜ストーヴにくべる燃料のぼっくりをひらうのだ
ちょうどいい大きさのを選別しながら わざと時間をかけてプラスティック袋を一杯にするまではと
そうやって我慢比べを仕掛ける

結局はこっちが焦れて 顔をあげちゃうんだけど
それは向こうも同じらしく いくらか近くまで戻ってきてるから可愛い

こうなると やっぱりこのまま自由にさせていてもいいかななんて
さっきの癇癪なんてすっかり忘れて ”良い子だ良い子だ” なんて言いながら頭を撫でてる自分がいる

しかし また五分もしないでそんな浮かれたココロに変化が訪れるのだ

人というのは勝手なもので あれほど犬の好きにさせてやろうとか云っておきながらも
時にふと ”やっぱり少しくらい仕込んでおかなきゃだめかな” なんて、、、



zoeこの尾根を歩いていると 枝が開けて そこから向かいの滝子の南面が大きく見える場所がある
そこにはベンチが設えてあるんだけど 今ではそれはいまにも崩れそうなくらいに朽ちかけている

このベンチはというと
あの時は あたり前だけど まだ朽ちてなどいなかった
あそこに rio と並んで座って のんびりあのお気に入りの滝子を暫く眺めていたベンチだ
お茶なんか淹れたりして 多分30分かそこらは もししかすると45分くらいも居たかもしれない

こればっかりは流石に自分でも馬鹿馬鹿しいとは感じたが
それでも zoe を呼びよせて そしてあの時と同じようにそこへ座らせようとした
だけれども なにも知らない彼女は満面の笑み(かどうかはわからないが)を浮かべて
”これでいいのか?” とでも言わんばかりの立ち姿で此方をみていた


あの時と同じ様に 背中越に滝子が見える画が撮れるといいなと思ったんだけどね




この日は 行ってもお坊やままでと決めていた

夕方にその天辺に着いた時 もしかしたらこの向こうにいい場所があるかなとも思ったけど
とにかく決めていたから 素直に戻って その昔から其処に幕を張ろうと決めていた場所に幕を張った

荷物の全てを落ち葉の上に投げだしてからテントを張った

タープでも良かったんだけど
zoe にしたら はじめて山中で夜を明かすというのに さすがにそれではココロ細かろうと
二人でヌクヌクと過ごせるように それから窮屈なのもイヤだろうからと大き目のテントを持ってきた
まあ どっちの理由も付き人が勝手にそう思っての事なので 
もし犬に聞いたなら きっと ”なんでもいいよ それより帰りたい” って言ったにちがいない

zoewood stovezoe

犬は 暫くの間 ”まだ帰らないのかよ” って目で此方の様子を伺っていたけど
一通りの作業を終えて飯の仕度を始めた付き人を確認すると
いよいよこれは帰らないらしい という事が判ったのか 観念してふかふかの落ち葉の上に横になった(正しくは伏せた)
でも顔にはこう書いてあるのが明らか ”ここで寝るの?” って

こっちは 久しぶりに犬と野営ができるのが愉しくて愉しくて
なのにその犬ときたら そんな付き人の気持ちはわかるが まったくそれどころでは無いといった感じで
全然愉しくなんか無いとは言わないけど 可也怖いんですけどみたいな様子で
視線の先は真っ暗な森から片時も離れなかった

何か得体の知れない気配
たぶんたぬきかオコジョか もしかすると鹿かもしれないけど
とにかく zoe には初めての夜の匂いが不安をさらに煽っていたようだ

イカ飯rice

夕飯だけど
zoe には陽が暮れる前に食べてもらった
暗くなってからだと たぶん辺りが気になってそれどころではないと思っていたからだけど
まさか本当にその通りになるとは

先に食べ終わってなにもする事がない犬が時々こっちへ近寄ってきて 何を食ってるのかといった顔で器を覗き込む
そんなに食いたいならと 白飯を丸めてあげたり ちょっとだけ烏賊缶の汁を浸けた飯をあげたり、、、

お互いの食事も済んたところで 小さな焚き火に集中することに

それにしても焚き火は落ち着く
こんなに小さなのでも あるのとないのでは全然違う

犬にもそれが判るのかは まったく知る由もないけど
いよいよ焚き火だけが今することの全てになったのだという事くらいは理解しているようだった

小さなストーヴに焼べる為に拾ってきた松ぼっくりは まだまだたくさん残っていたけど
テント周りにはそれ以上にくべやすい枯れ枝がいくらでも落ちていた
それも 座ったままで手の届く範囲にある

暫くして身の回りのやつを粗方燃やし尽くしてしまったので
一度だけ焚火の明かりの届かない森へ枝をひらいにいった
zoe も当たり前のように付いてくるが その途中で 何に驚いたのか テントと反対側の真っ暗な尾根を一目散に下って行って見えなくなった
”悪い冗談はやめろ” といいながら迎えにいくと 闇の中に尻尾をダラリと垂らした zoe がいた

それからまた暫く焚火をつつきながら一方的に犬に話かけた

最後にくべた太めの枝をつついて ”これが燃え落ちたらテントに入るから”  と最後に一言
そしてそれが熾火になるのを見届け犬をテントに押し込んだ


nanga
11月としては酷く寒い夜だった
風もあった
でも 吹き上げてきた風は山腹ににぶつかると 上手い事テントの上へと舞いあがっていった
そしてここの尾根の天辺を通りこして向こうの峪へと吹き降していたようだ
だから風の音は止まなかったけど テントに当たる風は殆ど感じなかった

夜中に何度か目が覚めては 犬はどうしてるかしらと
赤いライトで照らして安否を確かめる

一度目は足元にまとめた荷物に寄りかかっていた
目があったので こっちへ来いと声をかけたが 動こうともしない
それなら お前がそこでいいならそこに居ればいいと また寝た

二度目に目がさめると 今度は真横にいて
ウチのソファでそうしているように犬はぴったりとボクにくっついて 
キュッと体を丸めて寝ていた やっぱり寒かったんだろう、、、

三度目に目がさめた時に時計を確認したら
時刻はそろそろ明るくなってくる頃だったので 
今度は眠らずに 身の回りを片付けながら辺りが白んでくるのを待った




zoe はというと ホントに待ちどおしかった夜明けだったようで
それの訪れをいまかいまかと 身を起こしてテントの真ん中に座り込んでまっている

片付けるのには邪魔だったけど 
なんとなく気持がわかったのでそのままにしておいてやった



zoein the morningpots,cups and stoves

実のところ夜が明けるのを待っていたのは zoe だけじゃない

ボクは辺りが白み始めてくると本当にホッとする もっともその時分に目が覚めてればの話ではあるけどね
特にろくに寝付けなかった夜なんかは 一時間おき位に時計を確かめては今か今かと夜明けを待っていたりする
だから zoe がどれほどの思いでこの時を待っていたかがよく判る

zoefujizoe and pack

昨晩吹いていた風はすっかり弱くなっていたけど
弱くなった事で風の通り道が低くなったのか 昨晩とは正反対に風音はしないが風そのものは当たるようになった
それもかなり冷たい
おまけに陽が昇るまえなので寒い
だからテントに尻を突っ込んだまま朝飯の仕度をした

例によって zoe には先に飯を食わせた
腹いっぱい残さず食ったわけではなかったけど
それでもこっちが昨日の残り飯でちまちまやってても ソレが食いたいとやってくる事はなかった
それよりも明るくなった広い落ち葉の尾根をあっちへ行ったりこっちへ来たり
穴を掘ったり枯れ枝を破壊したりしてるほうがうんと愉しかったんだろう
それと ケモノの気配がすかっり消えたのもあったかもしれない

zoezoe and mezoe

陽が昇って暖かくなってきた頃にやまを下りはじめた

一度でも歩いた事のある所は もはや自分のモノとでもいった風に zoe は広い尾根を縦横無尽に歩きまわりながら下る
時々近づいてくるのは水が飲みたいときくらいなもん
でもなオマエ 残りの水 あと一口しかないんだよ

祠で

若い犬と山で一晩 おわり
(2014/11/18-19)

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この記事へのコメント
こんばんは
いろいろと いろいろな意味で ありがとうございます

rio は3歳過ぎてから山へ連れ出しましたが zoe は0歳から英才教育してます
だから時間の問題ですよ 先代を追い越すのは

文字ですが 
投稿時に特に文字サイズを指定しているわけではないので
お使いのブラウザでフォントの表示サイズを大きくすればいいと思います
ちなみにグーグルクロームだとかなり小さく表示されますね
ぼくは自宅ではサファリを使ってますが フォントサイズ12に指定してます
Posted by m&M at December 23, 2014 23:44
いい文章です。素直にこれだけ書ければ立派です。
あたしは犬族とこれほどの付き合いをしたことがないけれど、うらやましい仲だね。
言ってしまえば、rioになるにはまだまだzoeは若いんだよ。
スイもアマイも心得ていたrioは大人だった。
zoeもそうなるだろうさ。

ところで、もうすこし活字を大きくしてくだされ。
ローガンのあたしには読めやしない。
いつも拡大して読んでるんだよ。メンドイからね。
Posted by ケースケ at December 23, 2014 14:12