この日はさいしょから
陽当たりのいい尾根道の何処かに座り込んでおひるごはんを食べよう
とにかくこの日はそれだけ出来ればいいからと
そんな感じで家を出た
ようやく冷え込みも増してきて
近所の低いやまへ入るのにもいい時期になってきた
この頃はちょっと寒いけれど それくらいがあの辺りへ行くには丁度いい
ほんの少し前まで毒虫や蛇やなんかがうろちょろしていた森
夏草ボウボウで あの中へとかき分け踏み入るにはちょっとした覚悟が必要だった
でももう大丈夫 血吸うやつもいなければ ニョロニョロカサカサするヤツに悲鳴を上げるさせられるコトもない
なんの覚悟も必要ないのだ
鬱蒼とした草も枯れ 雑木の葉もすっかり落ちたいま
あの辺りは見違えるくらいに明るくさわやかなのである
いつものように浜沢の橋の辺りに車をとめて歩きだす
いつものように(いつも、、といっても zoe は四、五回目だけど)通りの家の軒先を伺いながら
いつものように鎮守様の境内をぐるっとまわって
そうしてから峪筋の檜林の中を登りはじめる
ここへ入ると zoe はいつも真っ先に沢に降りて水を飲む
それは決して ”沢の水は旨いねぇ” ってコトではない
苦手な車に揺られて小一時間
そのあいだガラスに張り付いてハアハァし通し
よって口から体の水分が大量に放出されてしまったいま 喉はカラッカラになっている からなのだ
車の後部座席のガラスには zoe の吐息でべったり
おまけに何ともいえない複雑な模様が残されて、、、
だから沢水がぶ飲みなのである
まあ 確かに沢の水も旨いんだろうけどね
あちこち臭いを嗅ぎ嗅ぎ進むから 登るのにも結構時間がかかる
とはいえ やまのぼりに来てるだけなので時間がかかろうが一向に構わない
なので よほど停止時間が長くならない限りはそのまま好きにさせておくのだ
とにかく zoe は
というより犬たちはそうするのが大好きだから 有る程度は好きにやらせておくべきだと思う
穴を掘るのも大好きだから
そうやってあたりをつけた場所に鼻先を突っ込んで穴を掘りだすんだけど
畑や公園の花壇を荒らしている訳でもないので これも有る程度は目をつむってやらせてあげよう
もちろんその穴だけど 其処が人が蹴つまずきそうな場所だったりしたら
それは付き人がちゃんと埋め戻さなきゃいけない 何故かというと埋めるのはそれほど得意ではないみたいだから
もしこの大好きな行為のどちらかでも制止させられたら
きっと zoe は いや犬たちはきっと絶望のあまり真っ暗な奈落へ落ちてしまうに違いない
だから 時には足が泥だらけになろうが 泥がべったり付いた鼻先で服をよごされようが
”そんなコトぜんぜん気にしていないよ” みたいな感じに振る舞ってあげよう
そうするだけでお互い幸せなになれるからね
まちがっても 首輪やハーネスに繋がってる綱を力任せに引っ張ったりしてはイケナイ
そんなことしたら きっとその日の犬との愉しいやまのぼりは一瞬のうちに台無しになるだろうから、、、
ただし それが朝の散歩の時だったりすると それはちょっと話が変わってくる
ほんとに勝手な話で 人間の都合で申し訳ないとは思うけど、、、、、
ふかふかの落ち葉の道を辿って立野峠に
これから梁川へ下るという年配の二人組の方が峠で休んでいた
あなたたちはどっちへ行くのかと聞かれたけど 決めてなかったので さあどっちにしようかなあと思ってるいると
zoe がさっさと倉岳山のほうへ歩きだした
だから 倉岳へ行くみたいですねと言って それからお互いの安全を気遣う言葉を掛あい別れた
ほんとうは逆へ行くつもりだったけど ココは犬の行きたいほうへと素直に従った
山頂は前に来た時と同じで 静かで暖かだった
隅っこの南側に腰掛けて昼飯の支度にとりかかる
昼飯は炊きたてご飯にカレー
炊きたてってことは炊飯するのだが それが出来上がるのには小一時間はぼーっとしていなきゃならない
というよりぼーっとしていられる
寒い晩秋の山でぼーっとしていられるのはとても幸せ
そんなわけで 日向ぼっこしながら飯が炊けるのを待つ
待つあいだ犬にご飯をやる 犬はこっちの飯が炊けるまで待つなんて余裕はないようなので
ご飯が炊きあがったのでフリーズドライカレーをお湯で溶く
そうそう近頃のフリーズドライ食品はうまい おまけに軽いのでやまへ持って行くには重宝する
ただしちょっと高いけど、、、
先に飯を済ませそこらで遊んでいた犬が なにが出来上がったのかと寄って来た
ぴたりと隣に座り ”カレー喰わせろ” みたいな視線を向ける
カレーはもらえないと判ると 犬は遊びを再び始める
穴を掘ったり 枝を齧ったり 紅葉狩りをたのしんだり、、、、、
食後に林檎を八つ切りにした
zoe は欲しがるわりには積極的に食べようとはしない
それでも時々こっちへやって来てはクレという顔をして迫ってくる
紅茶を二杯飲み干すとなんとなく肌寒くなってきた
夕方までココにいて 向こうのやまに陽が落ちて行くのを眺めるつもりでいたけど
思ってた以上に冷え込んでいきたのでさっさと里へ下る事にした
穴はちゃんと埋め戻してから
穴路峠まで下ると先へ進もうよと言いたげに高畑山の方へ行こうとする zoe
そのやる気は買うけど
きょうのところはやめておこうよと zoe を説き伏せるも言うこと聞かず
なのでやむなく引きずり降ろす
そして 足元に連れ戻された犬にこう言ってやった
”オマエはまだ若い 今日は仕舞いだけど これから先 嫌というほど引きずり回してやるから”
それが不本意そうな顔した犬に伝わったかどうかは判らないが とにかく下山することに
里は晩秋らしく 軒の彼方此方にコロ柿が吊るしてあった
シロも元気そうに ウォウウォウと声をかけてくれた
最近はめっきり見かけなくなったわらぼっちも懐かしい
出来ればも少し大きいな藁のタワーが見たかったけど
zoe とピクニックランチ(倉岳山で飯盒炊飯)20.nov.2013 終わり、、、、つづく