夜中に目が覚めたので億劫だけど外を伺ったら月が綺麗だった
向かいある天幕の康平くんも起きてたようで ぼーっと光るテントに影がみえた
テントは青黒いような橙いろのような そんな色んな色が混じっていてる
おまけに中で人が動くたびにあちらこちら色が変わっていくのだ
もちろん月も眺めていたけど そんな向かいのテントの様子が面白くて
なんとなくそっちを暫く観察していた
それにしても穏やかな朝だった
ここ暫く ”雨がつきまとうヤツ” というレッテルが付いて回ったけど
ここまでは大丈夫、、な感じ
あたりまえだけど高い山の上にいるので結構寒い
それに陽が昇る直前ってのもある
ボクは寒がりなのでなかなかテントから出だすことができない
それよりも未だにシュラフから足を抜くことができないでいる
それでも陽が昇ってくるところは観ることができた
特に日の出を拝むのが好きな訳ではないけれど
たまたま早起きしていて
たまたま東向きにテントのジッパー側をそっちに向けていたからね
こんなワタシでもそんな好条件が整っていれば眺めますよ いくらへそ曲がりなワタシでも
いよいよ陽が昇るって時も シュラフに足を突っこんだままソコに座っていた
そしらた津田くんが 日の出とこっちを交互にみて笑ってた
いやホントに穏やかな朝である
一旦用足しにでて
またテントに戻る
そして朝飯の用意
いや逆だったかなあ、、、、覚えてない
とにかく用足しに出た後もしばらくこの中で
こんな風景をずっと眺めてた
テントでうだうだしてたら
西側に写るブロッケンが凄いって津田くんが言うもんだから
どれどれって感じで行ってみたけど
スクリーン代わりの雲は何処かへ吹きとんでいて
ただただやたらと風が冷たかった
凍えた手を擦りながらテントへ戻ろうかと下を見ると
一つテントを挟んだ向こうの人たちが撤収完了間近だった
みんなの早い行動に焦りを覚えた訳ではないけど
ああ、、何かしないと、、なんて気がしてテン場へ降りるも
今日は両俣へ下るだけなんだから別に急ぐコトもないし
急いでも始まらないんだよなあ、、とまたもやネジが緩む
テントへ入る時に上を仰ぐと
さっきまでボクが居たところに康平くんがいた
ホントに寒そうに 陽に照らされながらスープかなにかを飲んでいた
この日の予定だけど
二人は北岳から間ノ岳、三峰を周って乗越しから両俣へ
ボクはこの先の分岐から
ここいら界隈で一番好きな尾根を辿って中白峰沢の頭を巻いてから
そして一気に下り両俣へ
早い話がお互い次の目的地は一緒
違うのは
彼らにはもう一日日程の余裕があるがワタシには無い
そんな悲しい 貧乏ヒマ無しな日程なのである
そうこうしている間に(こっちがまだネジ締め始める前に)
二人とも準備が整ったようで
ちょっと遠周りの津田・白井組がさっさと出発していった
ボクはテントから這い出て見送る、、、、
あんなにイイ天気だったのに
彼らが小屋の前を通る姿がよく見えないくらいガスが上がってきた
だから
もう少しココでのんびりしているつもりだったけど
予定を変えて
ちょっとだけ動きを速めるコトにする
テン場にあった忘れ物を小屋へ持って行く
ついでに出発のあいさつをする(はて?これもアベコベだったか、、)
雨降ってきますかねと聞くと
今日いっぱいくらいはどうにかもちそうと小屋番
でもなるたけ急いだほうがいいだろうとも、、
出だしからガスの中
まるで昨日の大樺沢を登ってるときと同じで あたり一面真っ白
それでも少し下りはじめて右手側が切れ落ちてる辺りまでくると
左から右へガスが飛ばされこれから行く尾根が見えた
けれどそれもほんの一瞬で
直にまたカールのほうからガスが上がってきてさっきと同じように真っ白になった
中白峰沢の頭から樹林帯へ
しばらくそのままどんどん下る
沢の音が聞こえてきたなあなんて思ってると
その音が一気に大きくなって
あっけなく左俣大滝に出る
久しぶりに滝を眺めた
最近はあまりココまで来ない(釣遡って来ない)から
滝を見たのは久しぶりだ
いや それほど久しぶりじゃあないかな、、、とにかくそんなこともよく覚えていない
左岸へ
右岸へ
を繰り返し踏み跡を辿って山ノ神を目指す
右岸の踏み跡は枯葉が積もっていて特に気持ちがいい
このまま小屋まで行けたらと何時も思うけど
残念ながらそうはならない
何処かで石を跳んで あっちへ こっちへ とやらないとイケナイのである
釣遡ってる時のつもりで 調子にのってぴょんぴょんやってると
たまに痛い目にあう それでも大抵は大事にはいたらない
だけど それでもたまにどうにもならなくて 冷たい沢水に足を浸らせなきゃ済まないコトも起こる
そうそう
はなっから靴を脱ぐことを面倒と思わなければ何も厄介なことは無い訳で
渡渉点が現れたら そしたら清く靴を脱いで渡り 足を拭いて また靴を履いて 、、、、
それを繰り返しやって降りて来ればイイだけの事なのだ
いやいや是非そうするコトをお勧めする
もし仮に石を跳んで
跳んで転んで濡れるだけならいいけど
跳んで転んで怪我でもしたら大変ですからね
小屋までもう幾らもないからって言っても
歩けなければどうにもならないですから
後々の愉しい想い作りにも ”ゆっくりのんびり渡渉して” のほうがいい気がしますね
何せ普通に歩いたら小一時間とかからない行程なのだ
ソコを ヤレ右岸へ渡れだの今度は左岸へ返すぞだとか その合間に冷えてシビレタ足をさすったり、、、
小屋についたら
そんな冷え切った足をストーブや炬燵で温めながら
バカ話もできるんじゃないかなあと、、、そんなのも愉しいかなあと
なんと言っても山小屋なんて何もないトコですからね
右俣に少し戻れば跳べる石が有ったかもしれないけど
右岸伝いに小屋の前まで来ちゃったもんでどうにも面倒になった
だから久しぶりに渡渉と云うものを実践してみた
まああれだね
自分で渡渉を勧めておいて それでいて当の本人がやらないのでは
まったくの片手落ち
まるで自分とこの店で売ってるモノを ”コレはホントに最高ですよ” なあんて吹きまくっているのに
『で あんた使ってるの?』 と聞かれたとたん店の奥へ後じさり、、、みたいなもんですわな
真向かいの右岸から小屋を眺めたのは久しぶりだ
これは大滝のおもひでと違って本当のコト
昔はこっち側に道があって ここら辺まで来てからハシゴの橋を渡ったんだよね
そんな記憶はたしかにある
あの時 ”イヤ違うよ” と星さんも言わなかったから合ってるに違いない
ズボンの裾を膝までまくって
靴を脱ぎ靴下だけになって沢を渡った
それにしてもやたら冷たくて こんなコトなら少し戻って跳んで渡れば良かったと
こころの底からそう思った
板の間に腰かけて足を乾かしながら ”岩魚がいっぱい浮いてましたよ” と話すと
『あら そういえばここんとこあんまり釣しないよね』 だって
”いえいえあちこち釣歩いてますよ” なんてトボケるが
『ココでだよ』 と
”だからねえ う〜んと釣った人はいいかげん次の人に譲るんですよ” って釣師らしく大ボラ吹くと
いつものように ガ ハ ハ ハ と豪快に笑っていた
北岳越えて小屋へ 終わり
六月に小屋開けにいったと思ったら
あっという間に小屋閉めです
今シーズンはとうとう行かれなかったという方
今シーズも愉しかったという方
今シーズンは、、、それぞれかと思いますが
来シーズンも また小屋でダラダラしましょう