浜松隊からの依頼で 北岳に一緒に登るコトになったのは 確か盆前だったような気がする
始まりは、、 ”九月の最終週の休みは北岳ハイキングです 日程調整お願いします” といった丁寧ではあるが半強制的な文面の電子メールからで
発信主は浜松隊のナベからだった
彼女は
あの嵐の竜胆で 気持が萎えるどころか 逆に山に憑かれたらしい
普通なら 初めてのハイキングであんな暴風雨にやられたら もう山へは来ないだろうに、、、
そういえば 確かアノ時 北岳同行をうっかり承諾したしまったような気がする、、、まだ僅かに漁期が残っている時期だというのに
day 1 -- 広河原から --
雨具やストーブと一緒に 小継棹と小ぶりなリールを持って とりあえず出発!
山のぼりは好きだけど のぼり始めの急登はいつも辛い
中でも 樹林帯の見通しのきかない急登は僅かな愉しささえも無く、、、
”ああ また来ちゃったなあ、、” といった若干の後悔のような心持ちでいつも山のぼりが始まる
多分ナベはボク以上に辛く
”ああ なんてトコへ来てしまったのか、、” と思っていたに違いない
はままつくんは、、、、なんだかワカラナイけど いつも愉しそうである
こういうのも十人十色というのだろうか、、、、
雨が降って来た
はままつくんが一緒なので 絶対に降ると判っていたから それほどがっかりはしなかった
でも、、、また雨か、、、
雨の中 御池小屋に到着
お昼時だったので迷わず転がり込んで食事を注文した
こんな雨の中 外でストーブを焚くなんてご免だからね
昼飯のあと ”ここで停滞” を冗談ぽく提案したけど はままつくんに一蹴され
それじゃあと ”肩の小屋泊まりを” とやや真面目に進言を試みたが、、、やはり受け入れてもらえなかった
まあ 大樺沢からコルを辿るコースは好きなので 別によかったんだけど、、、、それにしてもコレが後々面白い展開になるとはね、、、
二股に出てから石くずの中をハアハア言いながら登り続ける
雨は降ったりやんだり
時々ガスがあがって来て何も見えなくなる
ガスのなかで休憩中にナベが、、、限界?に見えたので ”降りるか?” と聞いてみたけど ”行く” という
その後 トラバース分岐に辿り着いたと同時に 号泣するナベ(一回目) これほど辛いとは思わなかったと言いながら、、、
それをぽか〜んと見ていたボクらは 何故か笑いがこみ上げてきて、、、いよいよクスクス笑いが次第に爆笑へと、、、怖い顔でさらに泣くナベ、、、
無事にトラバースを越えて北岳山荘に到着
何度も来ているけど泊まったのは初めてだ テン場を利用したことはあるけれど
小屋泊まりは身軽でいいけれど その代わりに色々と制約というか自由にならないコトもある
特にこういった大きな小屋は色々と決めごとがあるようで あちこちに張り紙がはってあった
まあどれもたいしたコトでは無いけれど、、、、次はやっぱりテントにしようと思った
夕食中 小屋のスタッフが爽やに挨拶を始めた、、、、、なるほどこういう世界もあるんだな、、、
と思いながらテーブルに並んだ鰆フライと葡萄のジェリーを見ていた
別に行儀よくしようと思ってたわけじゃあないけど
ナベが担いできた一升酒に まったく手を出さないで寝た、、、いや寝てしまった
そのまま十時間くらい、、、だからこんな顔?してるわけじゃあない、、、
そういえば 朝飯の時もやっぱり爽やかな挨拶があった、、、、なるほどこういう所なのか、、と、、今朝はリンゴのジェリーが山のように積んであった
day 2 -- 晴れたので出発! --
初冠雪の富士を見ながら頂上へ向かった
山頂は意外にも静かで ボクらの他には二組だけ
代わる代わるカメラを預けて記念撮影 なので こんな写真も記録出来た
たまにはこういうのも良いものだ、、、正直少し照れるけど、、
両俣へ向けて降下開始
ココらがこの辺りで一番好きだ
いつ来ても誰も居ない
ほんとに静かで気持ちのいい所
なかでも中白根の頭直下が風も無く居心地が良い
ハイマツに埋もれて休む
順調に高度を下げる
稜線から樹林帯にはいるところが少しザクザクしてて嫌らしいけど それほどのモノでもない
ナベも無事通過
あとは長い樹林帯をやり過ごしたら左俣のイワナを眺めながら降るのみ
左俣の水量がちょっと気になるが それとて渡渉がちょっと面倒なだけだ
左俣の登山道はほぼ崩壊していた
まあ コレは随分前から崩壊していたのでいまさらといった感じだ
通れると思う人は通れば良いし
”やめろ” と忠告された人は素直に別ルートを辿るのが賢明だと思う
そうそう この前の台風で渡渉回数も倍くらい増えたしね、、、
-- day 2 両俣小屋編 --
浜松隊未だ下山せず、、、
その左俣の何処かで嵌っていると思われるはままつくんとナベゴン
一足先に両俣小屋の軒先で昼を食べて待ってた
山ノ神にもお参りに行った
そうやって彼らを待ってはいたけど
それでも 彼らは一向に現れない
最終バスは三時四十分
時間はどんどん過ぎていく
そしていよいよタイムリミットが迫ってきた
放置もしておけないので駆け足で沢を遡り返して行くと うんと上流で彼らを発見
すると
なんと あいつらときたら
イワナを眺めたり
渡渉を楽しんだり、、、、そうしている風にしか見えないくらいゆったりしている
そう無傷である
とにかく怪我も無く 病の気も感じられなかった
そうと判れば次の判断は決まっている ”放置” である
”はままつくん十五分で小屋まで降りて” というと無理ですとの答え
”じゃあ君たちは両俣にお泊り決定ね” と 首からタオルを下げてサンダル履きのはままつくんにそう告げた
そして一目散にそこを後にする
途中でガクくんが様子を見に来てくれたので やや心苦しくはあったが今一度後を頼んでヒトデナシのボクは更に急いで山を降りた
--- 北岳とアバークロンビーと浜松隊両俣停滞 ---
後の小屋番からの報告で ナベは小屋に着くとまた号泣したらしい
終わり